2021.12.29 神奈川県民ホール
【出演者】
指揮:三ツ橋敬子
司会・バリトン:宮本益光
ソプラノ:高橋 維、伊藤 晴
テノール:村上公太
バレエ:上野水香、厚地康雄、ブラウリオ・アルバレス
ヴァイオリン/首席ソロ・コンサートマスター:石田泰尚
ピアノ:中島 剛
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
【プログラム】
■オーケストラ
・チャイコフスキー:バレエ音楽「眠れる森の美女」より 序奏とリラの精
・プッチーニ:交響的奇想曲
・ニーノ・ロータ:映画「ロミオとジュリエット」より 愛のテーマ
・R.シュトラウス:交響的幻想曲「イタリアから」より第4楽章
■オペラ
・プッチーニ:オペラ『ラ・ボエーム』より「冷たき手を」~「私の名はミミ」~「私が街を歩くと」~「さようなら、朝の甘い目覚めよ」
・グノー:オペラ『ロメオとジュリエット』より「私は夢に生きたい」
・ビゼー:オペラ『カルメン』より「花の歌」
・マイアベーア:オペラ『ディノーラ』より「軽やかな影(影の歌)」
・マスネ:オペラ『エロディアード』より「はかない幻」
■バレエ
・チャイコフスキー:バレエ『眠れる森の美女』よりグラン・パ・ド・ドゥ
・ロシア民謡:黒い瞳
■石田泰尚×門脇大樹スペシャルDuo
・ヘンデル(ハルヴォルセン編曲):パッサカリア
■アンコール曲
・ヴェルディ:オペラ『椿姫』より「乾杯の歌」
・J.シュトラウスI:ラデツキー行進曲
2006年から始まったこのコンサート、最初は「オペレッタ・ガラコンサート」だったが、翌2007年から「ファンタスティック・ガラコンサート」と改名し現在に至る。2021年まで16年、毎回2000席を超える客席がほぼ満席になるのだから、神奈川の名物イベントと言えよう。
私は16回のうち、有難いことに15回出演させていただいた。1回出られなかったときも発注を受けていたのだが、他の公演と被ってしまい泣く泣く断念した。
1回目から14回目までを指揮されたのが松尾葉子先生。先生と呼ぶと「先生と言わない!」と、歯切れのいい声でピシャリとたしなめられるのが常だが、私は藝大時代、先生から指揮を教わったので「先生」と呼び続けた。
このガラコンサートのプログラムも松尾先生の構成で、オペラとバレエ、共に造詣の深い先生ならではの選曲が本当に素晴らしく、実はこのコンサートの成功はこの構成によるところが大きいと思う。
このような盛りだくさんのガラコンサートになると、最も大変はのはオーケストラなのだが、限られたリハーサルの中、言うべきポイントを絞って彼らの能力を最大限に引き出す松尾先生の手腕は唯一無二だ。
私たち歌手のことで言えば、何度もご一緒している曲であっても、必ずピアノリハーサルの時間を取って下さった。それによりオーケストラ合わせでテンポ感の相違など、まずなかった。
このコンサートには司会がいて、1回目が作曲家の青島広志先生、2回目がピアニストの斎藤雅広先生だった。
青島先生は舞台でもよく喋るが、舞台袖でもずーっとお喋りを続けていて、演奏が終わるや「ちょっとごめんなさい」と言って舞台にサササッと登場し「とても素晴らしい演奏でございました」と言うものだから、ある意味プロだなーと思った。
フレンチカンカンが鳴り響く中、突然グリゼットの衣裳を着た先生がラインダンスに殴り込みをかけたのには驚いたが。
斎藤先生はその豊富な知識量と巧みな話術で、この盛りだくさんなコンサートに一本の筋を構成した感があった。圧巻はご自身がお弾きになった「ラプソディ・イン・ブルー」で、あのややデッドな神奈川県民ホールをものともせず、ピアノの輝きを存分に見せつけた。
斎藤先生とはその後も親しくさせていただいたが、2021年、突然お亡くなりになった。心よりご冥福を祈るばかり。
続く。